開発者向けのメール API:サービスの選び方と費用の目安
Resend、Postmark、SendGrid、Mailgun、Amazon SES など 10 のメール API を、月 1 万〜10 万通の費用、無料枠、Webhook、ログ保持期間で比べます。
結論:用途で 3 つに分けて選ぶ
アプリからパスワード再設定や注文確認を送るだけなら、まず Resend か Postmark を検討してください。2026年10月7日に読み取った料金ページでは、月 50,000 通で Resend の Pro が $20、Postmark の Basic が $55 でした。通数が月 1 万通前後なら Postmark Basic の $15 のほうが安くなります。月に数十万通以上を送り、コストを最小にしたいなら Amazon SES が最安で、Essentials は 1,000 通あたり $0.16 です。ただし SES は通知の受け取りやテンプレート管理などを自分で組み立てる前提です。ユーザーの行動に応じたオンボーディングメールまで一つのサービスで扱いたい場合は、Loops や Customer.io のようなプロダクト向けメールが候補になります。
料金はすべて米ドルで、各社の料金ページから読み取った値です。円換算は為替で変わるため載せていません。1 通あたりの単価が同じように見えても、送れる通数の単位、ログの保持期間、専用 IP の条件が違うので、下の表と各サービスの説明を合わせて読んでください。
10 サービスの料金と無料枠
| 順位 | サービス | 無料枠 | 有料の入り口 | 通数が増えたとき |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Resend | 月 3,000 通、1 日 100 通まで | Pro $20(月 50,000 通込み) | 追加 1,000 通あたり $0.90。Scale は $90(100,000 通込み) |
| 2 | Postmark | 月 100 通(テスト用) | Basic $15(月 10,000 通から) | 50,000 通で $55、125,000 通で $115(Basic のスライダー) |
| 3 | SendGrid | Email API は 60 日間、1 日 100 通のトライアル | Essentials $19.95(月 50,000 通) | 100,000 通で Essentials $34.95、Pro $89.95 |
| 4 | Mailgun | 1 日 100 通 | Basic $15(月 10,000 通)、Foundation $35(50,000 通) | Foundation の 100,000 通で $75、Scale の 250,000 通で $215 |
| 5 | Amazon SES | 新規の対象顧客に最大 $200 のクレジット(6 か月) | Essentials は 1,000 通あたり $0.16 | 250,000 通で $40 |
| 6 | Loops | 最新 1,000 連絡先へ 30 日間で 4,000 通まで | 連絡先数で変動。約 10,000 人で $99 | 約 50,000 人で $249 |
| 7 | Customer.io | なし(創業初期企業向けの Startup Program あり) | Essentials は 5,000 プロファイルで月 $100 | 10,000 で $145、20,000 で $235 |
| 8 | Mailchimp Transactional(Mandrill) | 新規ユーザーに最大 500 通(認証済みドメイン宛) | 25,000 通のブロックが 1 つ $20 | 50,000 通なら 2 ブロックで $40 |
| 9 | SparkPost | 月 1,000 通 | Startup は 50,000 通で $15 | Startup 100,000 通で $30、Growth 100,000 通で $80 |
| 10 | Mailjet | 月 6,000 通、1 日 200 通まで | Essential $19(月 15,000 通) | Essential の 50,000 通で $40、Premium で $59 |
出典:Resend、Postmark、SendGrid(Twilio)、Mailgun、Amazon SES、Loops、Customer.io、Mandrill、SparkPost、Mailjet の各料金ページ(2026年10月7日閲覧)。スライダーの価格は、ページ上でスライダーを動かして読み取った値です。順位は、トランザクションメールを自分のアプリから送る開発者を想定した筆者の並べ方で、機能の優劣を示すものではありません。
月 1 万通・5 万通・10 万通だといくらか
トランザクションメールだけを送る場合の月額を、読み取った価格から並べます。「—」は、その通数の価格を今回は読み取っていないことを示します。
| サービス | 月 10,000 通 | 月 50,000 通 | 月 100,000 通 |
|---|---|---|---|
| Resend | $20(Pro) | $20(Pro) | $65(Pro + 追加 50,000 通 × $0.90) |
| Postmark | $15(Basic) | $55(Basic) | —(スライダーは 50,000 と 125,000 通) |
| SendGrid | —(セレクターは 50,000 通から) | $19.95(Essentials) | $34.95(Essentials) |
| Mailgun | $15(Basic) | $35(Foundation) | $75(Foundation) |
| Amazon SES | $1.60(10 × $0.16) | $8(50 × $0.16) | $16(100 × $0.16) |
| Mandrill | $20(1 ブロック) | $40(2 ブロック) | $80(4 ブロック) |
| SparkPost | —(無料は月 1,000 通) | $15(Startup) | $30(Startup) |
| Mailjet | $19(Essential) | $40(Essential) | —(Premium は 100,000 通で $112) |
この表は、単純な通数あたりの価格の比較にすぎません。Amazon SES の数字が桁違いに小さいのは、受信箱への配信の管理画面、テンプレート、イベント通知といった周辺機能を含まない素のインフラだからです。SES を選ぶと、バウンスや苦情の通知を受け取る仕組み(SNS など AWS の他サービスとの連携)と、ログを見る環境を自分で作ることになります。SendGrid の Essentials は 50,000〜100,000 通のレンジで $19.95 から始まりますが、料金ページに「税金や超過分がかかる場合がある」との注記があります。
Mandrill は料金の仕組みが特殊です。25,000 通を 1 ブロックとして月ごとに購入し、使い切れなかった分は翌月に繰り越されません。ブロックを使い切ると、送信は止まります。しかも Mandrill は Mailchimp の Standard または Premium プラン、もしくは旧 Monthly プランに追加するアドオンとして提供されています。すでに Mailchimp でメルマガを送っている会社には自然ですが、これから単独でメール API を探す開発者にとっては前提条件が一つ増えます。
各サービスの特徴と注意点
1. Resend:小〜中規模のコストを抑えたいときの第一候補
Pro の月 $20 に 50,000 通が含まれ、追加は 1,000 通あたり $0.90 です。Scale は $90 で 100,000 通を含みます。スライダーにはProの100,000通の段もあり、そこは$35なので、通数だけならProのほうが$55安くなります。Scale を選ぶ理由は通数ではなく、ドメイン数(Pro 10、Scale 1,000)、Webhook エンドポイント数(Pro 5、Scale 10)、専用の Slack サポートです。専用 IP は月 $30 のアドオンで、料金ページには「Scale で 1 日 3,000 通を超える顧客向け」とあります。無料プランは 1 日 100 通の上限があるため、注文が集中する日がある店では、月間の枠に余裕があっても止まることがあります。React でメールのテンプレートを書きたい場合は、Resend 提供の MIT ライセンスの OSS、React Email が使えます。
2. Postmark:取引メールと一斉配信を分けたい場合に向く
Basic $15、Pro $16.50、Platform $18 がいずれも月 10,000 通からで、追加 1,000 通あたりの単価は $1.80、$1.30、$1.20 です。段は50,000通で$55、125,000通で$115です(Proは$60.50と$126.50、Platformは$66と$138)。計画に使うのは足し算の結果ではなくスライダーの段の価格なので、ピークの通数に合う段を最初から選んでください。Webhook は HMAC 署名ではなく、Basic 認証と Postmark の IP の許可リストで守る設計です。専用 IP は月 300,000 通以上を送る Pro 以上の顧客向けで、1 つ月 $50 からです。比較の詳細はResend と Postmark の比較にまとめています。
3. SendGrid:Email API と Marketing Campaigns は別の料金体系
Twilio SendGrid の料金ページは、トランザクション向けの Email API と、メルマガ向けの Marketing Campaigns を別々に価格表示しています。Email API は 60 日間・1 日 100 通のトライアルのあと、Essentials が $19.95 から、Pro が $89.95 からです。Pro には専用 IP が含まれます。Marketing Campaigns には Free(2,000 連絡先、月 6,000 通)、Basic $15、Advanced $60 があります。Marketing の価格を Email API の比較表に混ぜないよう注意してください。Postmark との違いは、英語のPostmark と SendGrid の比較で扱っています。
4. Mailgun:ログの保持期間がプランで大きく変わる
無料は 1 日 100 通で、ログの保持は 1 日分です。Basic($15、月 10,000 通)も 1 日、Foundation($35、月 50,000 通、最初の 1 か月は無料)は 5 日、Scale($90、月 100,000 通)は 30 日と、料金ページに書かれています。送信の失敗を後から調べる運用では、この保持期間が実際の使い勝手を左右します。追加の専用 IP は月 $59 です。Mailgun と SendGrid の比較は、英語のSendGrid と Mailgun の比較で扱っています。
5. Amazon SES:最安だが、組み立てる手間が大きい
Essentials は 0〜1,000 万通で 1,000 通あたり $0.16、Pro は $0.22 に加えてアカウント・リージョンごとに月 $105、Enterprise は $0.23 に加えて月 $500 と料金ページにあります。250,000 通を Essentials で送ると 250 × $0.16 = $40 です。ほかのサービスのような管理画面や Webhook を求めるなら、周辺の AWS サービスを使った実装が必要になり、その開発と運用の工数が実質的なコストです。AWS をすでに使っていて、通数が多く、運用を自社で持てるチームに向いています。
6. Loops:アプリのユーザー行動に合わせたメール向け
Loops は連絡先数で価格が決まるサービスで、無料プランは最新 1,000 連絡先に対して 30 日間で 4,000 通までです。有料プランは、スライダーの読み取りで約 10,000 人が月 $99、約 50,000 人が月 $249 でした。トランザクションメールの送信は有料プランに追加費用なしで含まれ、チーム席の追加料金もありません。製品の登録直後のオンボーディングのように、利用者の行動を起点に送りたい場合に合います。Resend との違いは英語のLoops と Resend の比較を参照してください。
7. Customer.io:行動データが多いアプリ向け
料金はプロファイル(人とオブジェクト)の数で決まり、Essentials は 5,000 プロファイルで月 $100、10,000 で $145、20,000 で $235、30,000 で $325、40,000 で $415 です(月払い)。メール 100 万通が含まれ、追加 1,000 通は $0.12 です。マネージドの到達率支援は Essentials に含まれず、上位プランにあります。Premium は月 $1,000 から(年払い)です。調達額が 1,000 万ドル未満の創業初期の会社は、Startup Program で 1 年間無料になるとされています。
8. Mailchimp Transactional(Mandrill):すでに Mailchimp を使っている会社向け
前節のとおり、25,000 通単位のブロック制です。1〜20 ブロックは 1 ブロック $20、21〜40 ブロックは $18 と、大口になるほど単価が下がります。専用 IP は月 $29.95 のオプションです。使い切るとその月の送信が止まる点は、パスワード再設定のような止められないメールには危険なので、残量の監視が欠かせません。
9. SparkPost:50,000 通以上の帯域で選ぶ
無料は月 1,000 通で、1 日 50 通の上限があります。Startup は 50,000〜100,000 通のレンジで $15 から、Growth は 100,000 通〜250 万通のレンジで $80 からです。スライダーの読み取りでは、Startup が 50,000 通で $15、100,000 通で $30、Growth が 100,000 通で $80、250,000 通で $175、500,000 通で $295 でした。ログの保持は全プランで 30 日、専用 IP は Growth のみ 1 つ月 $24.95 です。超過の上限は既定で契約通数の 5 倍で、上限に達すると送信が止まります。
10. Mailjet:欧州系で、無料でも 1 日 200 通まで
無料プランは月 6,000 通、1 日 200 通までで、連絡先は 1,000 件です。Starter $9(月 8,000 通)、Essential $19(月 15,000 通)、Premium $29(月 15,000 通、1 日の上限なし)と続きます。スライダーでは Essential が 50,000 通で $40、Premium が 50,000 通で $59、100,000 通で $112、250,000 通で $265 でした。トランザクションとメルマガを同じ管理画面で扱いたい小さなチームが主な対象です。
Webhook とイベント処理:送ったあとをどう受け取るか
バウンスやスパム苦情の通知を受けて配信先を止めるのは、運用上の必須作業です。Resend は 検証のドキュメントによると Svix で署名し、svix-id、svix-timestamp、svix-signature の 3 つのヘッダーを、加工していない生の本文と照合します。Postmark は Webhook の概要のとおり、HMAC 署名ではなく Basic 認証と IP の許可リストです。失敗した通知は 1、5、10、10、10、15 分間隔で計 6 回再試行されます。再試行の対象は 5xx、408、429 と接続エラーで、それ以外の 4xx は恒久的な失敗として破棄されます。どのサービスでも、同じイベントが重複して届く前提で、イベント ID や MessageID を保存して二重処理を防いでください。
Amazon SES は、通知の受け取りを AWS の他のサービスと組み合わせる設計で、専用サービスのように Webhook を 1 つ登録して終わり、とはなりません。この点は、前の節で触れた組み立ての工数に含めてください。ここで挙げていないサービス(SendGrid、Mailgun、Mailjet など)の Webhook の検証方式は今回確認していないので、採用前に各社のドキュメントで署名の有無と再試行の仕様を調べてください。
日本向けに送るときの確認点
配信先に日本の読者が多い場合は、先に送信ドメインの認証を整えるのが近道です。Google の送信者のガイドラインは、Gmail に送るすべての送信者に SPF または DKIM を求めています。設定の手順と、到達率の見方は配信到達率のガイドにまとめました。
用途の分類も大切です。パスワード再設定のような取引上の通知と、キャンペーンの告知のような広告・宣伝は、法令上の扱いが違います。総務省の迷惑メール対策のページは、広告・宣伝メールは原則として特定電子メール法の規制対象になると説明しています。送信の経路を最初から分けておくと、あとで同意の管理を整理しやすくなります。携帯キャリアのアドレスへ送る機会が多い場合は、本番の前に実際の端末で受信テストをしてください。これは筆者の運用上の助言で、各社の仕様の説明ではありません。
どれを選ぶか:想定別の目安
- 月 50,000 通までで、コストを抑えたい:Resend の Pro($20)か、SparkPost の Startup($15)。Postmark Basic は 50,000 通で $55 と高めです。
- 月 10,000 通前後で、安定した運用をしたい:Postmark Basic($15)、Mailgun Basic($15)。
- 月 25 万通以上で、最小コストにしたい:Amazon SES。250,000 通で $40。その代わりに実装の工数を見積もってください。
- ユーザーの行動でオンボーディングを出し分けたい:Loops(約 10,000 人で $99)か、Customer.io(10,000 プロファイルで $145)。
- すでに Mailchimp を使っている:Mandrill。ただしブロックの残量切れで送信が止まる点に注意してください。
- 障害調査のためにログを長く見たい:Mailgun の Scale(30 日)、Postmark の Pro 以上(最大 365 日)、SparkPost(全プラン 30 日)。
英語のトランザクションメールのサービス一覧では、同じ用途のサービスを別の切り口で整理しています。
よくある質問
開発者向けのメール API で、いちばん安いのはどれですか?
通数あたりの単価では Amazon SES が最安で、Essentials は 1,000 通あたり $0.16、50,000 通で $8、250,000 通で $40 です。ただし、SES は通知の受け取りや管理画面を自分で用意する前提です。管理画面付きのサービスでは、月 50,000 通で SparkPost Startup が $15、Resend Pro が $20、SendGrid Essentials が $19.95 でした。
無料で試せるサービスはどれですか?
Resend は月 3,000 通(1 日 100 通まで)、Mailgun は 1 日 100 通、Mailjet は月 6,000 通(1 日 200 通まで)、SparkPost は月 1,000 通、Postmark は月 100 通のテスト用枠があります。SendGrid の Email API は 60 日間のトライアルです。
Postmark の Webhook に署名はありますか?
HMAC のような署名はありません。公式のドキュメントでは、Basic 認証と、Postmark が使う IP の許可リストで守る方法を示しています。署名の検証が必要なら、Resend は Svix 方式の署名を提供しています。
SendGrid のメルマガ用の料金と、API の料金は同じですか?
別の料金体系です。Email API は Essentials $19.95 から、Pro $89.95 からです。Marketing Campaigns は Free、Basic $15、Advanced $60 です。比較するときは同じ側の価格で並べてください。
ログはどのくらい残りますか?
サービスとプランで違います。Mailgun は無料と Basic が 1 日、Foundation が 5 日、Scale が 30 日です。SparkPost は全プランで 30 日、Postmark は標準 45 日で、Pro 以上は最大 365 日まで延ばせます。